#100日チャレンジ を読んでプログラミング教室ができること

日経BPから出版され、発売日前に増刷が決まるなど大きな話題を呼んでいる「#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった」を読んだので、それを読んで感じたことを小中高生向けのプログラミング教室スタッフ視点で書きたいと思います。#100日チャレンジ はXで @Luna_SE_Jp さん(本書の著者の大塚あみさん)によって投稿され、後半戦に差し掛かったあたりからTENTOスタッフ内でも話題になり注目していました。
プログラミングを学ぶ子どもたちをたくさん見ているからこそ感じることをいくつか挙げて紹介します。
ゲームを作ってるのがいい!(いいえ、好きなものを作っているのがいい!!)
プログラミング初心者の大学生がChatGPTを使って100日間100本のアプリを作って投稿するというチャレンジなのですがその作ったものの多くはゲームでした。プログラミングを学ぶのにゲーム作りは定番ですしとてもいい課題だと感じました。TENTO講師もChatGPTが出てきたときにAIに指示をしてスイカゲームを作ってもらいました がそれをじっくり続けるとこんなことになるのかという驚きのチャレンジでした。
しかしプログラミングを学ぶ課題にゲームがいいと一般的に言われるのは、小中高生などがプログラミングを学ぶ際にゲームは関心を持ちやすくコンピュータで動くものとしても親しみのあるものだからです。したがって見出しで()で付け足して書いた「好きなものを作っているのがいい!!」が本音で、このチャレンジをした大塚さんにとってゲームであることが大切だったのであって、闇雲にゲーム作りを勧めるのは違うかなというのがTENTOスタッフ間でも共通認識がありました。
先生の反応がいい!
先生というと色々なことを教えてくれる人であったり先生の言いつけを守らないと怒られるというイメージを持たれると思います。これは特にTENTOに参加する生徒の年齢層である小中高生には顕著でTENTOに通って生徒が最初にぶつかる壁でもあります。この本の著者の大塚さんは大学生ということで、学部生の持つ先生に対する先入観は前出のような小中高生と大きく変わらないかもしれませんが、こちらの本に出てくる2人の先生の反応が非常に理想的だなと感じました。
この本の中でいうとどのような点かというと、情報の授業でChatGPTについて知った著者が授業中にオセロを作らせていたところを先生に見つかる場面がありますが、その時の先生の反応は見習うところがあると思います。授業中に課題以外のことをやっているいわゆる内職に対して助言をし”また改善したら見せてよ”(本書26ページ)と言う声がけは中々できないと思います。
他にも“私がサポートできるのは、何かをやり始めた人に対してだけだ。”(本書203ページ)と言う先生の言葉も非常に共感しました。こうして学生が興味を持ったことに対して自然に後押しする先生方の反応がとてもいいなと感じました。
ChatGPTをどう使うかという問いがいい!
著者の大塚さんはChatGPTの事を授業で紹介されて知るわけですが、それをどのように使うのかという前向きな問いで接点を持てたのはいいと感じました。この当時は様々な教育機関で生成AIの利用について議論され、人によっては慎重に利用するものとして受け入れた方も少なくないでしょう。
それを使うとどうなるのか、ChatGPTそのものに相談しながら著者の大塚さんが考えていく過程にとても惹き込まれました。生成AIが登場して新鮮なものとして受け止められているタイミングで、どのように使うのかと言う問いに真剣に答えられたことでこのチャレンジが始まるわけです。
楽しみながら続けているのがいい!
何より、楽しい!に勝るものはありません。このチャレンジをはじめたのもChatGPTにアプリを作らせて100日100個SNSに投稿したら面白そうということがきっかけになったそうですがゲームや遊びのように取り組みはじめたのがいいですね。
そしてもうひとつ著者の大塚さんは様々発生する事態に割と楽しみながら関わっている様子が伝わってきました。先生から誘われた食事や色々な大人が集まる会合、ちょっとめんどくさいなと思うようなことも慎重に考えつつも楽しめるのは素晴らしいですね。
プログラミング教室には何ができるのか??
この本を私たちのようなプログラミング教室が紹介することは、見方によっては自分たちの立場を不利にする可能性もあります。ChatGPTや生成AIがあればプログラミングを学ぶためにわざわざ教室やスクールに通わなくていいと考えることもできるからです。
人間の先生には何ができるか??
TENTOの講師たちとこの本について話したときの反応は違いました。TENTOの授業では
- 好きなものを作りながら授業を進めます
- 先生は今日は何をする?と生徒の関心を中心に進めています
- AIチャットツールはもちろん様々なツールについて何に使えそうか一緒に考えます
- 楽しみながら学ぶ場所を作っています
同じ事を続けなければならないという事もなく、気になる事を見つけて先週と違う事をしていたり、授業中に他のことに夢中になるなんて逸脱もTENTOではもちろん大歓迎です。
もちろん自分1人でやりたい事を見つけるのは大変な労力ですし、いくつかいろいろ試してからやりたいことや自分に合ったことが見つかる場合もあります。その日の参加者に合わせて様々な提案をしたり、応募や発表をできる機会があるとご紹介もしています。様々な角度から関心を探りプログラミングを学ぼうとする生徒それぞれが好きな事をやりながら学べるように工夫をしています。
そしてTENTOの生徒でも先生をうまく使って成長している方は何か自分の中で見つけたものを自分でやり始めた人が多い印象です。「今日は何をしたらいいですか?」「課題を出してください」「やることを指示してください」という生徒も、だんだん要領をを得てきて取り組み方がガラッと変わる瞬間を見る事も少なくありません。
AIはプログラミング教室で使えるのか?
TENTOでは2023年10月に生徒が利用している独自のチャットツールにChatGPTを接続しました。そこでは自由に生徒たちが生成AIを使って色々な事を試しています。この本のチャレンジのようなまとまった取り組みこそまだ起こっていませんが、ChatGPTが生徒たちの学習をアシストしている様子は度々見かけます。
また、生成AIがプログラミングを学ぶ方の先生になることもできるのでは?と考えChat Studyというシステムを開発しAI先生コースも開講しました。これはプログラミングスクールの経験をもとに生成AIをチューニングして、適切な教え方またはファシリテートができるようにしたシステムです。
しかし、これらがあるからといって人間の先生が必要なくなったということは今のところありません。そして先生たちもこうしたツールを使いこなしている、そんなプログラミングスクールです。
関連情報
書籍紹介:https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/24/12/05/01757/
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※本書と株式会社TENTOは一切関係ありませんが、プログラミングを学ぶ新しいチャレンジとして著者の大塚さんや周辺の方の活動を応援しています