TENTOの3つの学習段階モデル
TENTOは子どもたちにプログラミングスキルを習得させることを直接の目標としていません。プログラミングスキルに限らない、さまざまな事柄を自分で学習する姿勢を身につけてもらうことがTENTOの目標です。子どもたちのこれからの長い人生を考えると、現時点でのプログラミングスキルよりも、今後新しい課題や取り組みがでてきたときに、それを自分で学べる能力やメンタリティ、つまり学習者としてのスキルを身につけることのほうが重要だからです。
このためにTENTOでは子どもの学習段階として次のような3段階を想定しています。
段階1:プログラミングを楽しむ
たいていの場合、子供は最初からプログラミングを学習したいとは思っていません。まずは、プログラミングの楽しさを知り、そのうえでプログラミングをさらに学びたいと思ってもらう必要があります。 自由な雰囲気の中で、プログラミングでものを作ることの楽しさを体感してもらいます。 そのために、初学のハードルが低いScratchやMinecraft、Viscuitを用います。 この段階では、学習はまだ自覚的なものではありません。学習は楽しみながら行われる副次的なものですが、やり方そのものは試行錯誤を通した本格的なものです。
ポイント:講師スキル
この段階では、子どもとしっかりしたコミュニケーションをとっていく講師の役割が重要です。教材を与えてそれをやらせるだけでは、子どもはお手本をこなして終わりになり、自発的な学習につながっていくことはありません。講師はなによりも、子どもたちに試行錯誤をさせなければなりません。試行錯誤せず正解に到達した場合はスキルがうまく定着しないからです。子どもたちに試行錯誤させつつ、なんらかの作品を作れるようにする講師スキルが必要になります。
段階2:プログラミングを学ぶ
プログラミングの楽しさがわかって、もっと学びたいとなった子供は次の段階に進みます。この段階では自覚的にプログラミングを学んでいきます。プログラミングを楽しむ段階では、とくだんプログラミングの概念を意識しませんでしたが、この自覚的学習の段階では、ループや条件分岐、変数の種類、オブジェクト指向などの概念を意識して習得します。
使用するツールは、主にProcessingとPythonです。
ここでは、子どもが自分なりの学習方法を身につけることがゴールです。習得することをとりあえずの目標として、小さいプログラムをたくさん作ったり、また人のプログラムを写したり、学び方を意識してもらいます。
ポイント:教材の構成
プログラミングを自ら学ぶと言っても、ページを繰っていってコードをコピーするだけのような教材では効果が上がりません。プログラミングの概念を学んだあとは、それを自由に発展させるような構成の教材が必要になります。また、自分でマニュアルを読み込んで必要な情報を集めさせるやり方で、徐々に受け身ではない学習方法を身に着けさせます。
段階3:プロジェクトを実行する
プログラミングの概念がわかったら、次はそれを現実に応用します。どんなものでも良いので、目標を自分で決めてプロジェクトに取り組みます。たとえば、アプリを作ったりWebサイトを作ったりコンテストに応募してもらいます。このとき、できることなら他の子どもと一緒に取り組むとよいでしょう。
使用するツールは目的に応じて異なります。スマホアプリであればUnity、WebサイトであればPHPなどが中心になるでしょう。
この段階でのポイントは、社会性です。プログラム作品を自分の中で完結させるのではなく、他の人との関わりで作っていってもらいます。もしずっと作っている作品があるのなら、それをなんらかの形で発表したり、仲間と一緒につくったり、あるいは身近な人、たとえば家族が欲しいものをつくるなどしてもらいます。
ポイント:講師の接し方
この段階では、講師はメンターやコーチとしての性格が強くなります。講師自身の場合どのように社会と折り合いをつけてきたのか、どのような作品を作ってきたかを話したり、彼らが社会と向き合うときの恐怖心を減らせるようにアドバイスします。
まとめ
段階1 | 段階2 | 段階3 | |
---|---|---|---|
名前 | プログラミングを楽しむ | プログラミングを学ぶ | プログラミングを役に立てる |
授業形式 | 授業形式 | 個別学習 | グループワーク |
言語(環境) | Scratch、Minecraft、Viscuitなど | Processing、Python、JavaScriptなど | 用途に合わせたさまざまなツール |
子どもが学ぶもの | プログラミングの楽しさ | プログラミングのスキル | 社会(仲間)との関わり |
※3つの学習段階モデルについての注意点
これらの3段階は、TENTOで学習者としてのスキルを学んでいくときのモデルケースとして設定したものです。かならずしもこのとおりに実行していくものでもありませんし、はっきりと分離されたものでもありません。たとえばScratchでプログラミングを楽しんでいれば(段階1)その子はなんらかの大きな作品(プロジェクト)に熱中していること(段階3)が多いです。また、段階3でWebサイトを作りながら、そのつど必要なHTMLのスキルを学ぶのはよくみられることです。